ONEPIECE

お噂はかねがね

 ああ、お噂はかねがね伺っております。 そう、目の前の額に傷跡を残す男は自分に告げた。ドフラミンゴは男を見下ろす。人のよさそうな笑みの向こうに何かしらいやらしそうな色が見える。性的な意味ではなく、性格的な意味で。もしくは性質的な意味で。つま…

我らが大佐

1 さて、とは海賊船を見下ろす。甲板に座らされた海賊の腕にはそれぞれ重たい手錠が嵌められており、その自由を奪っていた。これで全員かと隣に立っている中佐に女は一度確認し、はいそうです、との返事に納得して帰還すると正義の二文字をはためかせて踵を…

誇り高き

1 騒がしい空間。笑い声。酒の匂い。転がされた酒樽。旨そうな料理の香り。腹を剥きだしにして寝ている男。その腹には人の顔とおぼしきものが筆で描かれている。とぷとぷと視界の端ではコップに大量の酒が注がれ、縁から溢れている。注いでいる人間も注がれ…

馬鹿で不器用な

1 ゆらめく。ゆらめく。ゆらぎゆく。波の音。 耳に溢れる潮騒の音と鼻に香るその香を一杯に吸い込んで、海に飛び込む。体ごと放り投げて、海に沈む。どぷんと音を立てて沈めば、水分を枯渇させていた肌は水をあふれさせていく。吸い込んだ分だけ体は重くな…

How to cry.

1 こんなところに居たのか、としっかりとした両肩を寒い風に晒している女の背中を眺めて思う。砂漠の夜は冷える。その中で女は一人ポツンと、否、独りぽつんとバルコニーに凭れかかっていた。冷たい風がひょうと間をすり抜けていく。夜空に浮かんだ月は、澄…

Justice of yours

1 あのこの戦い方は綺麗なもんさ、と老兵は言った。 ドフラミンゴはつるの隣で桃色のコートを揺らしながら、背もたれに腰かけている椅子をがたんと揺らして、普段から笑顔を絶やさないその口元をいつもよりもほんの少しばかり大きめに吊り上げた。つるはそ…

貞操観念

 大した理由だろうか、と女はそう言って、男に預けていた体重をほんの少しだけ重くした。 クロコダイルは背を合わせている状態に、預けられた体重の分だけ反対に体重をかけ直すとその釣り合いを保った。両者から預けられる体重が均等であれば、それはソファ…

Looking Glass

1 この女は鏡を持っていないのだろう。持っていないに違いない。そもそも、鏡と言うものの存在を知らないのかもしれない。自分を左右対照に映し出すそのもの。曲がったものではない限り、それはそこはかとなく正確にそのものを表現する。髪の一筋、肌の色一…

バナナワニ

 凶暴な生き物。獰猛な生き物。危険な生き物。アラバスタ王国における速脚ランキング第二位を誇り、海王類でさえ食べるその強大さ。人の何十倍もあるその体躯は凛々しく雄々しい。石柱が一体何本あるであろうかと考えられるそのしっかりどころかどっしりした…

A terrifying encounter

 毒々しい目に痛い桃色の、羽毛のコートが廊下を埋めた。 通常の人よりも軽く二倍は大きい身体を軽く前方へ曲げ、普段使っている表情筋を逆に使い、口をへの字に曲げて不機嫌をこれ以上ないほどに露わにしていた。 そんな海軍本部に召集されたドレスローザ…

砂漠の英雄

1 蝋印をで封をされ、丸められた筒状の書状が差し出される。 皺の寄った、年を感じさせられる手から差し出されたそれをは一度見下ろし受け取ると、再度顔を上げてつるへと視線を戻す。顔も手と同じように多くの皺が刻まれており、年が感じられたものの、そ…

Lose a leg rather than a lifes.

1 部下を放してもらおうか。 男は、愛くるしいぬいぐるみを抱えて涙ぐんでいる少女の頭部に銃口を押し付けてそう言った。どうやらかくれんぼをしていた少女は避難勧告を聞き逃していたようだった。強めに押し付けられた銃口は震えている。少女がそれを見た…