大した理由だろうか、と女はそう言って、男に預けていた体重をほんの少しだけ重くした。
クロコダイルは背を合わせている状態に、預けられた体重の分だけ反対に体重をかけ直すとその釣り合いを保った。両者から預けられる体重が均等であれば、それはソファと実質変わりなく体に負担はかからない。人間の視界の限界点の向こうにあるミトの姿はクロコダイルでは視認できないが、背中の重みで女がそこに居る、ということは十分に理解できている。
そしてミトは先程の質問の問い掛けに大して、さも当然のような返答をした。否、しようとした。そこで大きく扉が激しい音をして開かれ、クロコダイルとミトはほぼ同時にこれ以上ないと言う程に嫌そうな顔をした。
その視界の先にあるのは桃色の、ふさふさとしたコート。外に開いた足で前へと進み、顔にはトレードマークの少し端が持ち上がったサングラスが一つ。それが一体誰なのかと問われる前に、誰であるのかが特徴から即座に理解できてしまう男の来訪に二人はうんざりとした。そして入室した男も、背中あわせに座っている男女の姿を見て、その素敵なスマイルを反対側に歪めて落とす。
ミトは険呑な空気を声に含ませつつ、現れたドフラミンゴへと声をかけた。
「何をしに来た」
「何って、テメェに会いに来たのさ。そっちこそ昼間っから何してるんだ?」
「会話」
「会話?」
「会話だ」
他に何があるとばかりにミトはドフラミンゴを一睨みすると、お前こそ何の用だ、と付け加えた。その問い掛けにドフラミンゴは手に持っていた紙袋をミトの目線に合わせるように軽く下げて差し出した。不審な目を向けられ、傷つくぜぇと笑いつつ、ドフラミンゴは誰も座っていないソファに腰を下ろした。
ミトは差し出された紙袋を警戒を解かずに受け取り、その中身を確かめた。中に入っていたのは、紙袋に紙箱という組み合わせでエコを完全無視したような装丁ではあったが、有名な洋菓子店のそれであった。紙箱を取り出して開ければ入っていたのは四つ。一人二つずつという予想だったのだろうかと思いつつ、ミトはクロコダイルの背中へ体重を預けることを止めて立ち上がった。
無くなった体重にクロコダイル自身も体を預けることを止め、空いているソファへと移動する。無論そのソファはドフラミンゴが座っているソファとは反対側に位置しており、そこからしても、同じソファをドフラミンゴと共有すると言うことを暗に拒絶している様子が見て取れる。
ソファにクロコダイルが腰を落ち着けると、そこに声が掛けられる。
「紅茶…いや、コーヒーの方が良いか」
「酒が」
「お前に出す酒なんぞここには一滴もない」
「フッフッフ!そう固ぇこと言うなよ!」
「クロコダイル、お前は何が良い」
「コーヒー」
「分かった」
おれの意見は?と不服気に唇を尖らせたドフラミンゴに見事な無視を決め込んで、ミトは持ってこられたシュークリームを片手に一度台所へと消える。
野郎と二人っきり。
尤もミトと居たところで女と二人っきりという単語は一切思い浮かんでこないことを知りながら、クロコダイルはドフラミンゴから執拗に向けられてくる視線を目を閉じて流していた。しかしながら、掛けられた声はこの状況下では明らかに自分自身へと向けられているのは否めず、視線だけを持ち上げる。億劫な色をその瞳に持たせ、どちらとも言葉を交さなかったために微動だにしなかった空間に揺らぎがもたらされる。
ドフラミンゴは、ナァ、とその大きな体をソファに完全に預け切り、身長の分だけ高い位置からクロコダイルを見下ろした。スマイル第一主義の男の口元にはいつものように笑顔が、癪に障る笑顔が浮かべられていた。大きく見せられた白い歯を全て叩き折ってやろうか、とクロコダイルはそんなことを腹の内で考えながら、ドフラミンゴが続けるべき言葉を遮ることもせず、大人しく静寂を保った。
「何の話してたんだ?ワニ野郎」
「それをてめぇに一々話す義理があんのか?」
淡白に返された答えに、ドフラミンゴはフッフッフと楽しげかつ特徴的な笑いを開いた口から零した。毎度のことながら、その口の形で、どうしてその発音ができるのか、クロコダイルには理解できない。ふ、という音を発生させるためには、少なからず口を窄める必要があり、どう考えてもその笑顔で発生させることができる音ではない。この男の声帯は一体どうなっているのだろうかと、そんな素朴な疑問がクロコダイルの頭を掠めた。尤も、それを解明しようなどという欲求は浮かぶことは無かった。
クロコダイルの素っ気無い答えにドフラミンゴは、愛想のねェと変わらず楽しげに笑い、ほぼ一方通行に近い会話を続ける。大きな手は人を操る仕草をせず、ただソファの上に乗せられていた。大きく開かれた足は床をしっかりと踏んでいる。帰るつもりなど毛頭無いのはそこから十分に見て取れた。
この男の相手をするのは非常に疲れることをクロコダイルは知りながらも、帰ることをしなかった。帰宅をほんの少し望んだが、それでは自分の奇妙な友人とこの男が二人きりになる。悋気、などそんな間柄では一切ないのだが、ここで帰ってしまえば、後々に何故帰ったと口をとがらせられることは間違いない。それは面倒臭いとばかりに、クロコダイルは大人しく椅子に着いている。
毒々しく目に痛い色を揺らしながら、夢追いの男の名を含む男は口を開いた。
「気になるじゃねェか」
「うるせぇよ、フラミンゴ野郎。本人に聞きゃ良いだろうが」
「おいおいワニ野郎。さっきのやりとり聞いてなかったのか?それともてめぇの耳はとうの昔に耄碌としちまったのかよ!」
揶揄を交えた言葉にクロコダイルは眉間に深い皺を寄せる。米神に青筋は立てていないものの、高いプライドをドフラミンゴはその爪で持って綺麗に傷をつけた。無論、そのつもりでわざわざ言葉を選び投げかけたのだから、それはそれで成功である。
ふつりと僅かに泡立った空気の心地良さにドフラミンゴは口角を微々に持ち上げ、その笑みを深めて行く。そのまま、ずいと身を乗り出そうとした時、芳しいコーヒーの香りが二人の間を割いた。現れた、女というよりもむしろ男と言った方が近い体の女は、その手にシュークリームを一皿につき一つずつ、それからコーヒーを三つ用意したトレーを持っていた。そして、その殺伐とした空気に、どうしたとドフラミンゴではなく、クロコダイルに話しかける。おれに話しかけろよ、とドフラミンゴがニタニタと笑いながら話し掛ければ、ミトは一瞥を寄越しながらトレーの上の物を一人一人に配分し、己もソファに腰を下ろした。
先程の話を断ち切られたことをクロコダイルは一切気にせず、寧ろ喜ばしいとばかりに話を続ける様子一つ見せずに、目の前に置かれたコーヒーを手に取り口をつけた。その味を舌で転がしながら、ふとミトへと視線を寄越す。向けられた視線に、ミトはああと笑った。
「ほら、この間美味しいって言ってたコーヒー豆だ。先日安く手に入ってな」
「何だ、ワニ野郎。一丁前にコーヒーの味にケチつけてんのか」
「半人前にも満たねぇ、尻の青い野郎に言われたかねェよ」
馬鹿か、と続けてクロコダイルは皿にあるシュークリームを掴み取るとガブリと一口二口で乱暴に食べた。それに、ミトはからりと笑い、自然な仕草でクロコダイルに手を伸ばし、その口端に余ったクリームを指先で拭い取る。
「付いてる」
親指の腹で拭ったクリームをミトは自身の口に含むと、やはり楽しげに笑った。クロコダイルはバツの悪そうな顔でもなければ、恥ずかしそうな顔もせず、淡々とした表情で何事もなかったかのようにコーヒーを半分程腹に入れる。
しかしながら、ドフラミンゴは反対に呆然とした表情でその光景を眺め、そして我に返ると、どういうことよとサングラスの奥で目を数回瞬かせた。全く、そう、全く先程の光景は甘い甘い恋人同士のやり取りのようではないか。一つ文句をつけるとするならば、両者の恥じらいの度合いが低い(どころか一切無い)ために、大量のハートが飛び交う桃色の光景に成らなかったということだろうか。
唖然としているドフラミンゴにミトはようやく気付き、食べないのかと声をかけた。
「お前が持ってきたんだ。最後の一つは…そうだな、明日中将に会うから、その時にでも差し上げる。茶受けの菓子にしては少し違うかもしれないが、つる中将ならば美味しく食べてくれるだろう」
「いや…そうじゃ、ねェだろう?ナァ、お前らいつもあんなことしてんのかよ」
「あんなこと?お前の湧いた頭で見た光景が一体どんなものだったのかは想像に難いが、私とクロコダイルの事を言っているのか、それは」
こちらも全く自然に、ドフラミンゴを貶める言葉を会話文に綺麗に含ませながら、ミトはドフラミンゴへの返答とした。そしてさらに呆れたように続ける。
「一度でいいからお前の頭を覗いてみたいもんだ。何をどうしたら毎回そんな色惚けた光景にしか物事が映らなくなるのか。その鬱陶しいコートを脱いでみたら世界も変わるんじゃないか?」
そんな馬鹿な話は無い。
ドフラミンゴは、ミトの言葉の半分以上を右から左に流して、おいおいと口元に小さく引きつった笑みを浮かべた。
「どこまで夫婦漫才をおれの前で見せつけりゃ気が済むんだ」
「薄気味悪ィこと言うんじゃねェ、フラミンゴ野郎が」
口から付いて出たクロコダイルの罵倒に、ドフラミンゴは両手を上げて、その白い歯を唇の形で不機嫌そうに見せた。
夫婦漫才でなければ、新婚夫婦である。しかしながら、どちらにせよ彼らにとってはこれが通常、日常であると思われるので一体何を言っても無意味なことは、いい加減にドフラミンゴも嫌々ながらも理解はできている。理解はしても納得はしたくないものだが。いつ見てもどう見ても自分の入れる隙間などどこにもないことを、二人が揃う度に心底思い知らされる。
小さく舌打ちをしたドフラミンゴに、ミトは馬鹿馬鹿しいと呆れ返ったように言った。
「私とこいつがそんな関係になるはずもないだろう」
「どこにそんな保証があるんだ?テメェは何か勘違いしてやがるのかもしれねぇが、ワニ野郎も男だ。性欲だってあるし、欲求不満の時に女見りゃおっ勃てることもあるだろうさ…っと、危ねェ」
投げつけられたコーヒーカップを大きな手で受け取り、ドフラミンゴはそれを机に戻した。一方、飲み干したコーヒーカップを投げつけたクロコダイルは葉巻を取り出し、怒りを押さえるかのようにすぱと口に咥えて深く煙を吸うと、ゆっくりと吐き出す。
ドフラミンゴの言葉にミトは眉間に軽く皺を寄せた。
「馬鹿馬鹿しい、とは言うんじゃねぇぞ?どう転んだって、テメェは女なんだからな。男の心理なんて分かったもんじゃねぇ。あくまでもそりゃ推測の域にすぎねぇだろう?言い方は好ましくないが、下半身の生物ってのは強ち外れでもねぇ」
軽く手を振り、ドフラミンゴはサングラスの向こうから、珍しく罵倒することもなく蔑む視線も向けずにこちらを見ているミトにほんの少しだけ気分をよくしながら忠告をした。それにミトは、やはり呆れたような視線を向ける。
「忠告傷み入るが、先程も言った通り、私達はそういう間柄ではない。こいつも女に困っているわけではないだろうし、私で用を済ます必要もない。女が必要になれば抱きにも行くだろう。お前の心配はまさに杞憂そのものだな」
「タイミングが悪けりゃ、って話も含めてんだがな」
「その一瞬すら我慢できない男ではない。お前はどうか知らんがな」
やれとミトは話はこれでしまいだとばかりに文尻を下げ、シュークリームを三口四口で綺麗に食べ終えた。唇に付着したクリームは舌でぺろりと舐め上げて口内できっちりと平らげる。旨いと素直に感想を述べ、そしてコーヒーをほんの少し飲んだ。
自分の心配をあっさりと言い返されたドフラミンゴは、口をへの字に曲げて手前に置いてあるコーヒーに口をつける。クロコダイルお勧めだと言うコーヒーは憎らしいながらも大変美味しく、香ばしかった。コーヒー一杯に二人の仲を見せつけられているようで全く好い気はしなかったのものの、コーヒーに罪は無い。そして持ってきたシュークリームを一口で食べきると、その程良いはずの甘さを何故だか妙に甘ったるく感じつつ、再度コーヒーを口につけることでそれを緩和した。
「大体こんな男女に欲情してたまるか」
「同意だな」
「されてたまるか」
「してたまるか」
ぽんぽんと投げられ受けられ進んでいく会話のテンポは非常に良い。おいてけぼりを完全に食らったドフラミンゴは、バンバンと机を大きな手で二度程叩いて注目を再度集める。
クロコダイルとミトの視線を一時集めたドフラミンゴは、ほんの少しばかり話の方向を転換するための口火を切った。
「欲情するしねぇの話はもう沢山だ。大体、てめぇそれでいいのか?」
「何が」
「何がって」
何で自分はこんな心配をしているのだろうかと、欲する女の手前でドフラミンゴは頭を掻く。向いて欲しいのはクロコダイルの方ではなく、己の方だと言うのに、何故だかこういう心配の方向になってしまう。
そんな自分を腹の中で薄く笑いながら、ドフラミンゴはそうだと続ける。
「そりゃ、ミト。お前、いいのか?ワニ野郎に女が居ても」
そのドフラミンゴの言葉にミトはまたかとばかりに頭を押さえた。もう何度も繰り返された問答であるかのように、ミトはコーヒーの中にミルクと砂糖をぶちまけた。
「だから良いも何も…。お前な、確かに恋人に女が居ればそりゃ腹も立てるさ。だがな、私達は友人だ。お前は友人に恋人が居ることを煩わしいと思うか?そこは喜んでやるべきだろう。その上、相手はこいつだぞ。あのクロコダイルという男だ。お世辞にも性格は良いとは言えないし、高飛車で高慢ちきでその上口も悪いし愛想もない。そんなどうしようもない男を好きだと愛していると言ってくれる女が居る。これほど喜ばしいことはないだろう?」
「…おい」
地獄の底から響いてきそうな低音がミトの耳を擽った。だが、ミトは気にせずに、まぁ待てと話を続ける。ドフラミンゴは対面に座るクロコダイルの額にくっきりと浮かんだ青筋を見てとった。それがほんの少しだけ、イイ様だと思ったことは口にはしない。
「大体お前はセックスだ貞操だ何だのとしつこい。たかだか肉体関係一つで友人関係が変わってたまるか」
ミトの言葉にドフラミンゴは見事に言葉を失った。先程まで青筋を立てて噴火しそうだったクロコダイルも、その言葉には多少の気まずさを覚えたのか、視線をそらして葉巻をふく。
「たかだかって、そりゃ、お前」
「たかだか、だ」
食い下がったドフラミンゴをミトはすっぱりと言い切る。全く相手にするだけ馬鹿馬鹿しいと言わんばかりの態度にさしものドフラミンゴも苛立ちを腹の底に覚えた。
何だそれは、とまるでビッチを相手にしているような気分になる。言葉はそのそれなのに、それをいう女の性質がそれに全くそぐわないものであるからこそ、余計になお腹立たしいと言えよう。
ドフラミンゴは口元を引き攣らせながら言葉を紡いだ。
「そうかよそうかよ。なら、てめぇは今ここでおれたちに犯されても文句はねぇって言ってんだな?」
「文句はある。残念だな」
「言ってることが矛盾してるぜ?」
笑う桃色のコートを着た男を一つ睨んで、ミトは鼻を鳴らすことでそれに返事をする。
「まず第一に、クロコダイルにその気がない。そして二つ目、私は黙ってお前に犯されるような真似もしない。最後、興味関心が無いだけで、嫌だと思うことは思う。結論として、私は私が認めた場合以外で抱かれるつもりはない。ただ、強いて言うならば、体を奪われたところでそれが一体どうだと言う話だ」
「てめぇにゃ貞操観念ってもんがねぇのか」
「無いな。全く馬鹿馬鹿しい。初めてだの純潔だのそんなことで人の矜持を貶められるとでも思ってるのか。そんな事を口上に述べていい気になってるのは男くらいだ」
カップを机に戻して、ソファに体重を預けたミトへドフラミンゴは呆れたような目を向けた。
今まで己が抱いてきた女は確かに体を売る女も多かったが、そうでなかった女も当然いた。処女も居たし、初めてだからと言われたことも少なからずあったと言えよう。だがどうしたことか、目の前の女はそれがどうしたと笑って見せている。
とうとう黙りこんだドフラミンゴにミトは足を組んで、話が終わったことに対する気楽さから視線を外し、クロコダイルへと視線をずらした。
「お前もそう言うのは気にする性質なのか?」
「くだらねェ」
するりと返したクロコダイルにミトはにたぁと嫌な笑い方をする。
「お前もその年で恋愛の一つや二つ無かったわけじゃないだろう?こう、身も焦げるような熱烈な恋愛談とかはないのか?」
「…てめぇは中年の親父か。絡んでくるんじゃねぇよ」
手を振って返したクロコダイルにミトは尤もだと笑うと、コーヒーのポットを差し出し空になったクロコダイルのカップに注いだ。そして自身のミルクと砂糖がたっぷり入っていたコーヒーにも追加を注ぐ。
未だ言葉もないドフラミンゴにクロコダイルは本日ほぼ初めてと言っていい程に自分から声をかけた。
「こいつにそういう観念を持ち出したところで無駄だ、フラミンゴ野郎。空っぽの鳥頭にでも突っ込んどけ」
そう言ってクロコダイルは継ぎ足されたコーヒーへ唇をつける。先程よりも僅かばかりに温度が低くなっていたが、それはまた仕方のないことである。ああだが、とミトはクロコダイルの言葉に続けた。
「そう言った観念は無いにせよ、嫌いな男に抱かれるのは御免被りたいところだ。犯された所で傷がつくような心じゃないが、そういう行為は無い方がありがたいな」
「それ以前に、てめぇみたいな女を抱こうって男が居る方が奇跡に近いんじゃねェのか。心配いらねェよ」
ドフラミンゴの存在を綺麗さっぱり忘れ去ったかのような言葉を残し、クロコダイルはようやく席を立つ。もう帰るのかと尋ねられ、クロコダイルは時計を見、ああと頷いた。
「泊っていけば良い。何か外せない用事でもあるのか」
「ねェな」
「なら泊って行け。折角だ」
笑うミトに、クロコダイルは一度立った席へと腰をおろし、カップをミトへと差し出しお代りを要求する。それにミトはポットを手に取ったが、先程ので無くなったことを知ると、立ち上がり、少し待っていろと言う言葉と共に再度キッチンへと消えた。
再度男二人だけになった空間で、クロコダイルはカップを持ったまま何かを考えているドフラミンゴへと声をかけた。お前いつ帰るんだ、と。それにドフラミンゴは、黒い液体へ視線を落としつつ、おれも泊って行こうかと返し、そしてクロコダイルは葉巻を灰皿で消しながら、ミトのさも嫌そうな顔を思い浮かべ、新しい葉巻に火をつけた。