夢小説

услода жена

 気泡が液体に浮く。 瓶の中に詰められている飲み物は気泡の入った分だけ、その内容量を減らした。色のついたボトルの底を天井に向けていた状態から、膝の位置に下げる。瓶のヴォトカは半分程度、男の胃の中に消えていた。一人はソファに深く腰掛け、一人は…

愛の距離

 君は、と掛けられた声にセオはそちらに視線を向けた。左にはジーモ、右にはドンと古くからの友が座っている。各々の手には食べ物、もしくは飲み物が持たれていた。 場所はジーモの部屋のベランダ。時刻は昼時。天気は快晴。ランチには全く素敵な三つの要素…

Молчание знак согласия

 こつん、と白さが際立った指先が机を軽くノックする。重さを持たないその音に、ラヴィーナは本から目を離して顔を上げた。目をしっかりと覆っている布がそれに合わせ、ほんの少しだけ靡く。が、その奥に潜ませてある彼女を生物兵器たらしめている瞳が周囲に…

Нет розы без шипов

1 きゅぽんと口からヴォトカの瓶を外す。男は空になった小瓶を机の上に放り投げ、机に着地した瓶はくるからと回転しながら、その中央に置かれているグラスに衝突して止まった。からん、とカーテンの閉められている部屋に乾いた音が響く。男の手は一二度宙を…

Небрежность

 いよぉおおし!とセオはカレンダーを見てガッツポーズを決めた。その隣では頭二つ分は低いラヴィーナもほっと胸をなでおろしている。兄妹揃っての不可解極まりない、ともすれば変わり者扱いされそうな二人の行動を背中から眺めつつ、どうした、と火のついて…

Поедйндк

 ぶは、とラヴィーナは飲みかけていた茶を噴きだした。げほげほと咳込みながら、目の前に居る男に口元を盛大に引きつらせる。爽やかな笑顔で「彼」はそこに座っていた。「Добрый день(こんにちは)」「…」 ラヴィーナが斜めに噴きだした紅茶は…

Плотоядное животное

 ヴォトカの入った瓶を逆さまにする。ぐびりと液体が喉を通り、体を内側から熱くさせる。極寒の地のロシアでは、ヴォトカを飲んで丁度良いくらいの暑さだったが、ここイタリアでは気温が高いために全く暑いくらいである。あの刺すような冷たさが懐かしい、と…

Di sangue

 幸せである、とセオは思った。 目の前にある笑顔。溢れる花の香り。柔らかな声、口調。ドンに言わせれば、客相手に乱暴な言葉づかいをする人間はいないのだそうだが、そんなことは些細な問題である。ようは彼女の声が聞ければ、セオはそれだけでもう十分に…

守護者

 VARIAの紋章が刻まれた厳しい箱に納められているのは六つの指輪。一つだけ箱に納められてはいないのだが、それは自分の指に既に嵌められていた。父であるXANXUSから受け継いだその指輪は思いのほかしっくりと指に落ち着いており、まるで随分と昔…

死に臨む

 銀朱色の瞳をもった男を恐ろしいと思ったことは一度もなかった。 月に一二度は顔を合わせる機会があったし、彼はその度に林檎かアップルパイか、林檎ジュースか、兎も角林檎関連の何かをもぐもぐと口にして、気さくに挨拶代わりの声を掛けてくれた。時には…