VARIAの紋章が刻まれた厳しい箱に納められているのは六つの指輪。一つだけ箱に納められてはいないのだが、それは自分の指に既に嵌められていた。父であるXANXUSから受け継いだその指輪は思いのほかしっくりと指に落ち着いており、まるで随分と昔からそれを嵌めているような気分にさせられる。実際にはそんな事実はどこにも転がっておらず、現在自分の指にある指輪は父親の指におさまり続けていたわけなのだが。
セオはこつんと指輪を軽く突き、その質感を確かめた。
先日、と呼ぶほどには少しばかり前の話になるのだが、VARIAのボスとしての座を半ば譲り受けるような形で指輪を預けられ、そしてそれに次いでこの箱に納められているVARIAリングも手渡された。スクアーロやレヴィ、ルッスーリア。マーモン、ベルフェゴールが嵌めていた指輪である。
自分で選べと渡されたそれらの指輪を眺め、セオはその銀朱の瞳を重たく両側へと開く扉へと持ち上げた。人の気配がするそこからノックの音が数度響く。どうぞ、とノックに返答をすると扉はゆっくりと両内側へとその蝶番で摩擦を起こしながら開かれた。最も低い背が一番に目に突き、その口元は皮肉気に歪められている。
「忙しい俺を呼びだして態々何の用?君から俺を探しに来ないってのも全くやってられないね。これでくだらないようだったら俺の貴重な読書のための時間を潰してくれたことをどう詫びてくれるわけ?」
かつん、と体重が軽いために高めの革靴が音を立てる。その隣では凸凹も酷い身長差のしっかりした体格の男が一人、穏やかな表情を困らせていた。普段からよく顔を突き合わせている二人を筆頭に、後ろからぞろりと他の人間も顔を現す。今日はその中に女性の姿は一人としていない。淡い髪の生物兵器はその場には召喚されなかった。
左から最も低いドン、次に最も高いジーモ。その隣には左頬に鮫の牙を模した刺青を持つウドルフォ、さらに隣に口元までをベルトで覆い隠しフードを揺らしながら歩いているアノーニモ、そして顔に十字傷を刻み込んでいるメフィスト。指輪の数には一人足りない。しかし、セオはそれを大して気にする様子も見せず、手にしていた箱をぱちんと開く。その中に並んでいた指輪をセオはまず一つつまみあげた。
「ドン・バルディ。雷の守護者に」
指を軽く振ることで投げられたそれをドンはぱしと手に取った。人差し指と親指でそれをつまむとまじまじと見ながら、当初嵌めていた雷の指輪を外すと、そちらの指輪へと嵌め変える。
それを見てからセオは次に嵐のリングを手に取った。
「ジーモ・ゾフ。嵐の守護者に」
「俺?」
意外だなぁとジーモは笑ってから投げられたそれを受け取る。指輪の大きさは既に全員の手に合うように変えてあるので、ジーモの太い指でも嵌まるようになっている。流石にルッスーリアに嵌めていた頃の指輪では到底ジーモの指に合うことはない。
次を取り、セオは反対側の男に投げ渡す。
「メフィスト・ガブリエル。晴の守護者に」
「おう」
さも当然とばかりにメフィストは投げられた指輪を取る。投げ出された指輪はそのしっかりとした掌におさまり、そして指にはめられた。ふぅんと指に嵌められたそれを眺め、メフィストは部屋に入ってきたときと同じようにポケットに手を突っ込んだ。
そしてセオは部屋の人数からすればあと二つ、箱の数からすればあと三つの指輪のうちの一つをつまみだす。
「ウドルフォ・ドラーツィ。雨の守護者に」
「承った、ボス」
指先で器用に受け止め、ウドルフォは丁寧な仕草でその指輪を自身の物と嵌め直す。そして最後の二つのうち一つをセオはその隣に立つフードの男へ指輪を一つ残して投げ渡した。
「アノーニモ。雲の守護者に」
投げられた指輪を受け取りつつ、アノーニモは片手を持ち上げて発言をする。
「了解、ボス。ところで霧の守護者は誰にした?」
「ラジュだ」
アノーニモの質問にセオは一つ返して箱を閉ざした。ぱたん、と音が鳴る。
「一ヶ月しないと帰ってこない。その時に渡そうかと思っている。俺がお前たちを選んだのにはそれぞれ理由があるし、期待を裏切るような真似はしてくれるな。弱いと思えば、その指焼き落して指輪を返してもらおう」
持ち上げられた銀朱の瞳に、ぞくりと空気が冷える。彼の言葉は全く本気であるのが恐ろしい。弱いと判断されれば即座にその言葉通りの事を行うことだろう。そう言う意味では、前代の性質を色濃く受け継いでいると言っても過言ではない。
何かあるかとセオが言いかけた時、ちょっと待てよと一番端から不満の声が上がった。セオはそちらの方へと銀朱を向ける。
「何だ、メフィスト」
「今不在のラジュはいいとするぜ?ウドルフォもアノーニモも、ジーモも俺は納得する。だが、そこに居るドン・バルディは納得できねぇな。そんなチビで貧弱な体で何ができんだ?春一番で吹き飛ばされそうな体じゃねぇか」
あからさまに向けられた軽視にドンはふ、と軽く鼻を鳴らした。
「…君、それは俺に喧嘩を売ってるわけ?その体重と筋肉量に反比例してすっかすかの頭で一体何が考えられるのかは想像できないこともないけれど、流石筋肉馬鹿の言うことは一味も二味も違うね。春一番で吹き飛ばせる軽さなんて俺の身長から考えてあり得ないよねぇ、そんなことができるなら、ま、せいぜい竜巻くらいかな。後、強い台風なら納得してあげないでもないよ。俺に立てつくくらいなら、もう少しその空っぽの頭に脳味噌かもしくは綿でも詰めて食いかかってきたら?それともお空でピヨピヨ飛ぶためには頭は軽くなくっちゃいけないのかな?ガブリエルちゃん?」
「てめぇ…言ってくれるじゃねぇか、糞チビが…!そして俺の名前を馬鹿にしたな?俺の名前を笑ったな?」
「あれ?笑ったように聞こえなかった?それは残念。ならもう一回言ってあげようか?一言一句間違いなく俺は君と違って記憶力がいいから言うことができるけど?」
ばちんと飛んだ火花に、ウドルフォがまぁ待てと制止をかけようとしたがその前にセオの言葉がメフィストへと飛ぶ。
「それで?メフィスト、お前は俺の采配が気に食わないわけだな」
「気に食わないわけじゃねぇ、Jr。俺は納得してねぇだけだ。どう見たってこんなチビっころに守護者が務まるとは到底思えねぇって話だ。あっという間に奪われてVARIAの顔に泥塗るぜ」
メフィストの言葉にセオは軽く溜息をついて、ぎ、と椅子を鳴らす。座った椅子の上で脚を組んでドンへと視線を転がした。
「ドン、相手をしてやれ。膝をつかせろ」
「全治何ヶ月?」
「膝をつかせろ」
冷静で変化のない声にドンは軽く両手を持ち上げて了解と返事をすると、きゅ、と革靴を鳴らした。そして首を持ち上げて、下からメフィストを見上げ、そして馬鹿にするように笑う。
「相手、してあげるよ。他ならぬセオの頼みだもの。俺は遠中距離基本だけど、ハンデも含めて近距離でやってあげる。どう?」
そのあからさまに挑発する様な言葉にメフィストは見事にかかった。口元を引きつりあげ、米神を軽く震わせる。
「ハンデだと?テメェみたいなチビっ子にハンデなんざ必要ねぇよ。なら、俺は炎をつかわねぇでおいてやろうじゃねぇか。それで満足か?」
「そんなことしなくても、俺は余裕で君に勝てるけどね。肉弾戦?いいじゃない。宣言してあげるよ。君は、軽く俺がその空っぽの頭をなでられただけで、膝をつく」
「…言うじゃねぇか…やってみろ、糞チビが!」
「弱い犬ほどよく吠えるっていうけど、まさにその通りだね。で、セオ、いつから始めたらいい?」
「いつからなんてそんなものいるのか?」
勝手に始めろ、と言い出した人間はそれを放棄するかのように口元を笑わせた。その笑みはまるでドンの勝利を信じ切っているかのようで、メフィストは少しばかりどころではなく、全くもって面白くない。
目の前の小さな男。誰よりも小さく、そこら辺に居る女と大差はない。体のラインも非常に細く、自分やジーモのように鍛えた筋肉など一切感じられない。同じような体型を言うならば、アノーニモもそうなのだが、彼は結構な上背もあるし、ああ見えてかなり力が強い。だがこのドンという男は力関係ではひ弱を通り越して貧弱、いっそ虚弱である。一般人と大差がない。
だからこそメフィストはドンが雷の守護者だと言うのが全く理解できなかった。前雷の守護者であるレヴィ・ア・タンは上背もあり力も強くがっしりしていた。まさしく 「激しい一撃を秘めた雷電、雷電となるだけでなく、ファミリーへのダメージを一手に引き受け、消し去る避雷針」となることに相応しい男であった。
だが眼前の男にはそれが全く感じられない。激しい一撃など嗤わせる。彼の小枝のような細腕では擽る程度の一撃が関の山である。そしてあのような小柄で貧相な体でファミリーへのダメージを一手に引きうけるなど冗談にも笑えない。
がちん、とメフィストはその手にナックルを嵌めた。
「てめぇみたいな貧相な餓鬼に何ができるか見物だな!」
深く踏み込みそのまま体重を乗せた拳をメフィストは繰り出した。
その攻撃を見たウドルフォは眉間に軽く皺を寄せながら、ボス、と椅子に座ってその光景を平然と眺めているセオに多少の焦りを含めて声をかけた。しかしセオは気にかける様子は一切なく、首を軽く動かしてその視界にウドルフォを入れる。
「何だ」
「止めさせた方がいいのではないか。無益な戦いは好ましくない。もとよりメフィスト・ガブリエルとドン・バルディでは体格が違いすぎる。いくら炎を使わないことを約しても肉弾戦になればドン・バルディに勝ち目はない。無駄に怪我人を増やすだけだと思うが」
そんな言葉にセオは軽く溜息をついた。
「お前もか、ウドルフォ。心配いらない。勝つのはドンだ」
「しかし」
渋ったウドルフォにセオはちらと拳を足裁きで避けたドンへと視線を移す。床に拳が一つめり込んだ。後で修理しておかねばなるまいとそんなことをセオは頭の端でちらと考えた。
「確かに力でなら、ドンは平隊員にも負ける。だが、あいつの武器は力じゃない。黙って見ていろ、分かるから」
そんなものなのかとウドルフォは再度二人の戦いへと目を向けた。
大きくしっかりした肉体と、小さく弱弱しい肉体。拳がかすりでもすれば、弱いその小さな体は軽く吹っ飛ぶことだろうとウドルフォはそう考える。考えざるを得ない。今は軽いステップと足裁き、身のこなしで拳を避けているが、彼は体力的にも非常に劣る。逃げ続けてメフィストの体力を殺ぎ落とす前に、ドンの体力の方が先に尽きるであろう。セオの言葉をウドルフォは全く理解することができなかった。
ドンは笑いながらメフィストの攻撃を床を蹴り、宙を回転しながら避ける。勿論ドン自身もメフィストの体力よりも自身の体力が劣っていることは重々承知である。しかし、ドンには自分が負けると言う状況が全く想像できなかった。繰り出された拳を避ける。速さには自信があるものの、疲労が蓄積されていけば当然のようにスピードは落ちる。髪の毛が一筋持っていかれた。目の前に居る男の顔が笑みで歪む。
全く、愚か愚かしい。
自然と、ドンの口元は大きく歪んだ。
「小柄な体のスピードも落ちてきたんじゃねぇのか!」
「君は、馬鹿だね。ああ、俺の」
俺の、とドンは笑った。
攻撃パターンを読む。これだけの拳が繰り出されていれば、相手がどのコースの攻撃が一番好きかなど容易に知れる。それにおまけして、自分の攻撃を避けるパターンを一部に偏らせておけば、相手は簡単に釣られてくる。それを総合的に組み合わせ、導き出される答えは一つになる。一二三、とドンは数えた。次二つ目に右からの拳が訪れ、そしてその後は左脇が空く。そこに踏み込めば狙ったように左の拳が鳩尾を狙って振りあげられる。その一瞬。
右を避ける。左に踏み込む。そして案の定、左の拳が腹に吸い込まれるようにして飛んできた。ドンはうっすらと笑い、その拳の上に片方自分の掌を添え、足で地面を強く上に蹴る。体を拳の力に上手く乗せて勢いを生かしたままで自分の体を宙に飛ばさせる。体が完全に空中に舞った。ドンは上からメフィストを見下ろす。瞳の色が着地点に向いている。体が地面に触れる前に拳を体に吸い込ませようとその大きな体は動いていた。だが既に、積んでいる。
ああと灰色と緑が混ざった目が細められた。
そこからドンは軽くメフィストの頭部に指先を触れさせ、そのまま脚で蹴り飛ばす。尤も、こんな軽い重みのない打撃が効いているとはドン自身全く思っていなかった。しかし、これで終わりである。
メフィストは振り返り、軽く触れられ、そして蹴られた頭をナックルの付いた手の平で撫でる。
「は!これでしまいか!このて
程度、と言おうとしてメフィストは揺らいだ。何だ、と大きな手で頭を押さえる。ぞわぞわと視界が揺れ動く。目の前で影を背負って嗤う小柄な男の三日月の口の幅がどんどん狭められる。あらゆる方向から多大な、圧迫されそうな情報が頭に叩き込まれた。視界が「見ていない世界」を映し出す。目の前にあるはずのない景色と音が雪崩込んでくる。
メフィストは頭を押さえこんで膝を床につけた。それを見たドンは顔を歪めて厭らしく嗤い、倒れ伏したメフィストを見下し、そして革靴でメフィストの床につけられた頭を踏みつけた。はは、と嗤う。
「君みたいな猪突猛進型の馬鹿の相手するのはとっても面倒臭いし嫌いなんだけど、俺は舐められるの嫌いなんだよね。チビだって言われるのも嫌い。勿論言うまでもなく外見で人を判断してくるような脳無しはもっと嫌い。鬱陶しいったらありゃしない。このまま君の頭を情報過多で使い物にならなくしてもいいけれど、膝をつけるだけだしね」
残念なことに、とドンは薄ら笑いをその冷たい瞳の下に乗せてくつと歪めた。
「でもどうしよっかなー、ぎりぎりまで君を苦しめてもいい。どう?自分よりも小さくて弱い人間にやられる気分は。油断してたのもあるんだろうね。あーあー、折角ハンデあげたっていうのにばっかじゃない?自分から死地に赴くなんてさ。あ、殺してないか」
「ドン・バルディ」
見かねたウドルフォはその言葉を遮った。それにドンは凍えるような冷たい視線を向け、く、と笑みを歪めた。その視線の先にもうウドルフォはおらず、椅子に腰かけるセオのみが映っていた。
「はいはい。そろそろ止めてあげようかな。おいで」
そう言ってドンは軽く体を屈めると指先をメフィストの頭部へと伸ばした。そうすると、大体1cm前後の黒く小さな蜘蛛がドンの指先へと乗る。それがドンの指先へと移動した直後、メフィストは頭を押さえながら、ぎりぎりとドンを睨みつけて顔を上げた。
「てめぇ…!何しやがった!」
「へーまだそんな怒鳴りつける元気残ってたんだ。でも、俺の勝ち。可愛い天使ちゃん」
「…この…!」
「まだやるつもりか」
低い声とともに、セオはぎっと椅子を鳴らして立ち上がった。ざらとその黒髪が揺れてメフィストの元へと辿り着く。落ちた一つの陰にメフィストはその瞳を持ち上げ、そして戦慄した。ぞくりと体の奥から冷えるような瞳が暗闇の中から二つ覗いている。ひゅ、と気管が締め付けられるような圧迫感を覚えた。
目が、その銀朱に捕えられて、離れられない。
背筋が凍りつく感覚をメフィストは全身で感じた。
「お前が負けるのは目に見えていた。ドンが小柄だからと言って油断していたからな。油断せずに向き合っていれば、近距離ではドンは到底お前に敵わない。油断故の敗北だ。これ以上無様な失態を晒すか?メフィスト・ガブリエル」
「…No, mio capo」
く、とメフィストは歯噛みした。その緊迫感を破るように途端、クラッカーの音が激しく部屋に響いた。セオを始めとした全員の視線がクラッカー音がした方向へと向けられる。そこに居たのは、手に一杯のクラッカーを弾けさせたアノーニモだった。
「祝いだ。パーティーをしよう。準備はしてある。問題はない。ラジュが帰ってきていないのは少しばかり残念だが、彼が帰ってきたらまたパーティーをしたらいい。俺はパーティーをするのが好きだ。結果的に、皆でパーティーをすればいいと俺は考える。パーティーをしよう。パーティーをしよう。パーティーをしよう。大事なことなので三回言ってみたが、どうだろう」
頭をさすりながらメフィストが立ち上がり、ふとそこにいるセオの気配が一瞬で変化していることに気付く。既に、先程までの威圧感は消え去り、朗らかに笑っている男がそこに立っていた。別の意味で、メフィストは寒気を覚える。
そんなメフィストを他所にセオはそうだなと笑顔で返した。
「折角準備してくれたんだ。パーティーにしよう。お祝いもかねて。で、アップルパイはあるのか?」
「勿論。ボスはアップルパイが好き。俺は良く知っている」
「流石アノーニモ!パーティーの天才だ!ジーモ、ドン、早く行こう。ウドルフォも。メフィストも早く来いよ」
両手を叩いて、セオは喜びを一杯にして部屋を飛び出した。落ち着きがないのは相変わらずである。アノーニモはひょいひょいとその後ろをついていき、ジーモ、ドン、そしてウドルフォもその場を後にした。そしてメフィストは一人残されて、まだふらついた脚を軽く叩いて、ああ、と溜息を一つつくと壁に凭れかかって項垂れた。
料理を頬張りながらながら、ジーモはドンに尋ねる。
「さっきのって、匣兵器?」
「そう。あれはね、親蜘蛛。雲属性の炎で子蜘蛛を増殖させるの。子蜘蛛が見聞きした情報は全て親蜘蛛を所有している人間に伝わる寸法。情報処理しきれない馬鹿には不向きな兵器だよねぇ」
全く、とドンは笑いながら、皿の上のピザを一枚平らげた。ジーモはその隣でピザを三枚ほど重ねてから咀嚼した。相変わらずの大食漢である。
ドンはくつりと喉を引っ掻くようにして目を細め、嘲るように嗤った。
「あの馬鹿に乗せる瞬間に、普段の三十倍に増やしてやった」
「…怒ってたもんなー」
そしてジーモはグラスからオレンジジュースをごくりと飲むと、頭を押さえこんで倒れ伏したメフィストを思い出し、少しばかり気の毒に思ったが、それも仕方ないこと、とピザをもう三枚手に取った。