夢小説

40:La mia sorella minore

1 明るい部屋に男は座っていた。男の剣呑な雰囲気とは別に、その部屋の空気は柔らかく、そして対面に座る老人は、その男の養父は穏やかな表情をして座っていた。その手にはコーヒーカップが持たれており、そこからは香ばしく鼻をくすぐる香りが漂っている。…

39:嘘吐きと友達と失態

1 わらわらとクラスメートが移動をする。 セオはその様子を横目で見ながら、反対方向へと歩いて行った。それを見た一人が、セオと声をかけた。片手に教科書と筆記用具をもったセオは首をひねって何と軽く怪訝そうに尋ね返す。子供の集団が止まり、セオと反…

38:Capomafia o Padre

1 Hallo、と見なれない女性に声をかけられた。普段耳に触れるのはイタリア語か日本語だけなので、英語などついぞ久しい。はそう思いつつ、Halloと言葉を返した。そして声をかけてきた女性をへとその黒味が強い灰色の瞳を動かした。周囲には、子供…

37:子供の我儘

1 セオ!と明るくかけられた声に、セオは鞄に道具をしまっていた手を止めてそちらへと目を向けた。同い年の子供たちが集まって、セオと同じように帰る支度を始めている。「おれんとこさ、バッボとマンマが見にきてくれるんだ!」「あ、わたしのパパーとマン…

36:心配なんです

1 大きくなったものだ、とはさくんと手元の海老フライを切った。足元ではセオがきらきらと目を輝かせながら、の手元を覗き込もうと背伸びしているが、如何せん背がまだまだ低いため、キッチンの台で母が一体何をしているのかは見えない。ただ、美味しそうな…

34:Buoun Compleanno

1「ハァ」 そう、間抜けな返事をした笑い顔の男に赤い目をした男は、何だと僅かに眉間に皺を寄せた。さも不機嫌そうな顔をされて、シャルカーンはイエイエと袖を軽く振って笑う。尤ももとより笑い顔なので、笑ったのは声だけではある。 そしてシャルカーン…

33:進路相談

1 嵐は突然やってくる。天気予報で予測できないそれは、くるんと訪れどろんと消える。しかし嵐とは古今東西、多分きっと、そういうものなのだろう。  ぶぶ、と携帯電話が震える。は皿を洗っていた手を止めて、水で濡れてしまっている手をタオル…

32:情操教育

1 がつがつと足音大きく闊歩する男が一人。その隣で、ごつごつと鈍い音を響かせて横を歩く大男一人。シルバーの髪がざらざらと歩くたびに揺れており、その表情はどこか鋭い。けれども、片腕に抱えているペットを入れる籠がどうにもそれをそうと見させていな…

31:二人でお留守番

1 文字の書かれた紙。サインをするための万年筆。インク。固い机。座り心地のよい椅子。それから光のさしこむ窓の両脇に縛られた重厚なカーテン。そして、人間の言語を果たして解しているのかどうなのか、微妙な生物。絨毯の上に腰をおろして、クレヨン片手…

30:la Morte

1 翁面。それをかぶっている人間の体付きは男のものである。 外は暗闇。その中で白いその翁の面だけがぽっかりと浮いていた。月の光すらも届かないところで、ただ家の光をその白い面は受けている。 するりと男の腕が持ち上がって、インターホンを鳴らす。…

29:こっちを向いて、バンビーノ!

1 きゃら、とその表情が笑顔になる。銀朱の瞳が細められ、小さな手が持ち上がった。赤子特有の目元。一歩、体がうつぶせの状態から腹が持ち上がって手足の筋力だけで前進する。 そんな様子を見ている白髪の老人が一人、目を赤子に負けず輝かせてとろぉりと…

28:貴方の妻であるということ

1 かぷり、と吐きだした煙が随分と煙たかった部屋に混ざって溶ける。シルヴィオは火のついた煙草を口にくわえて、悪ぃな、と笑った。「なにしろ嬢ちゃんと赤んぼがいたからな。流石にあの前で吸うわけにもいかねーし」 困ったもんだよなぁ、と笑って、そし…