馬鹿で不器用な
1 ゆらめく。ゆらめく。ゆらぎゆく。波の音。 耳に溢れる潮騒の音と鼻に香るその香を一杯に吸い込んで、海に飛び込む。体ごと放り投げて、海に沈む。どぷんと音を立てて沈めば、水分を枯渇させていた肌は水をあふれさせていく。吸い込んだ分だけ体は重くな…
ONEPIECE 七武海時代 夢小説
How to cry.
1 こんなところに居たのか、としっかりとした両肩を寒い風に晒している女の背中を眺めて思う。砂漠の夜は冷える。その中で女は一人ポツンと、否、独りぽつんとバルコニーに凭れかかっていた。冷たい風がひょうと間をすり抜けていく。夜空に浮かんだ月は、澄…
ONEPIECE 七武海時代 夢小説
Justice of yours
1 あのこの戦い方は綺麗なもんさ、と老兵は言った。 ドフラミンゴはつるの隣で桃色のコートを揺らしながら、背もたれに腰かけている椅子をがたんと揺らして、普段から笑顔を絶やさないその口元をいつもよりもほんの少しばかり大きめに吊り上げた。つるはそ…
ONEPIECE 七武海時代 夢小説
貞操観念
大した理由だろうか、と女はそう言って、男に預けていた体重をほんの少しだけ重くした。 クロコダイルは背を合わせている状態に、預けられた体重の分だけ反対に体重をかけ直すとその釣り合いを保った。両者から預けられる体重が均等であれば、それはソファ…
ONEPIECE 七武海時代 夢小説
Looking Glass
1 この女は鏡を持っていないのだろう。持っていないに違いない。そもそも、鏡と言うものの存在を知らないのかもしれない。自分を左右対照に映し出すそのもの。曲がったものではない限り、それはそこはかとなく正確にそのものを表現する。髪の一筋、肌の色一…
ONEPIECE 七武海時代 夢小説
バナナワニ
凶暴な生き物。獰猛な生き物。危険な生き物。アラバスタ王国における速脚ランキング第二位を誇り、海王類でさえ食べるその強大さ。人の何十倍もあるその体躯は凛々しく雄々しい。石柱が一体何本あるであろうかと考えられるそのしっかりどころかどっしりした…
ONEPIECE 七武海時代 夢小説
A terrifying encounter
毒々しい目に痛い桃色の、羽毛のコートが廊下を埋めた。 通常の人よりも軽く二倍は大きい身体を軽く前方へ曲げ、普段使っている表情筋を逆に使い、口をへの字に曲げて不機嫌をこれ以上ないほどに露わにしていた。 そんな海軍本部に召集されたドレスローザ…
ONEPIECE 七武海時代 夢小説
砂漠の英雄
1 蝋印をで封をされ、丸められた筒状の書状が差し出される。 皺の寄った、年を感じさせられる手から差し出されたそれをは一度見下ろし受け取ると、再度顔を上げてつるへと視線を戻す。顔も手と同じように多くの皺が刻まれており、年が感じられたものの、そ…
ONEPIECE 七武海時代 夢小説
Lose a leg rather than a lifes.
1 部下を放してもらおうか。 男は、愛くるしいぬいぐるみを抱えて涙ぐんでいる少女の頭部に銃口を押し付けてそう言った。どうやらかくれんぼをしていた少女は避難勧告を聞き逃していたようだった。強めに押し付けられた銃口は震えている。少女がそれを見た…
ONEPIECE 七武海時代 夢小説
孵化効果
1 退屈と無関心で人は殺せるなどという。 その話を聞いた時にまず思ったのは、暴力の方が手っ取り早いということだ。退屈と無関心などというもので人が死ぬのを待つよりかは、首の骨を折るか剣で心臓を貫いた方が余程時間もかからず手早く済む。 そういう…
雨垂れ石を穿つむじょエミ
羊の群れ
群れというものは、往々にして弱者が強者から身を守る術として辿り着く一つの結論である。 無論有象無象であっても、数の暴力というものは凄まじく、一騎当千の兵であったとしても、圧倒的数には撤退を余儀なくされることもある。 その有象無象を片端から…
雨垂れ石を穿つむじょエミ
逃避
范無咎は謝必安という男について、本当によく知っている。 酒を片手に、肌を酒精の影響でわずかに上気させた、舌の滑りが滑らかな男を目の前にしてエミリーはそれをしみじみと思った。 そう思う女の両手に挟まれたグラスにも、黄金色の飴を煮詰めたウイス…
雨垂れ石を穿つむじょエミ