03子世代VARIA

Плотоядное животное

 ヴォトカの入った瓶を逆さまにする。ぐびりと液体が喉を通り、体を内側から熱くさせる。極寒の地のロシアでは、ヴォトカを飲んで丁度良いくらいの暑さだったが、ここイタリアでは気温が高いために全く暑いくらいである。あの刺すような冷たさが懐かしい、と…

Di sangue

 幸せである、とセオは思った。 目の前にある笑顔。溢れる花の香り。柔らかな声、口調。ドンに言わせれば、客相手に乱暴な言葉づかいをする人間はいないのだそうだが、そんなことは些細な問題である。ようは彼女の声が聞ければ、セオはそれだけでもう十分に…

守護者

 VARIAの紋章が刻まれた厳しい箱に納められているのは六つの指輪。一つだけ箱に納められてはいないのだが、それは自分の指に既に嵌められていた。父であるXANXUSから受け継いだその指輪は思いのほかしっくりと指に落ち着いており、まるで随分と昔…

死に臨む

 銀朱色の瞳をもった男を恐ろしいと思ったことは一度もなかった。 月に一二度は顔を合わせる機会があったし、彼はその度に林檎かアップルパイか、林檎ジュースか、兎も角林檎関連の何かをもぐもぐと口にして、気さくに挨拶代わりの声を掛けてくれた。時には…

だから、

 だから、とイルマは軽く息を吐いた。その隣では黒髪に銀朱の瞳をその身に宿した男が、紙コップに入ったコーヒーを傾けて飲んでいる。睡眠不足なのかどうなのかは定かではないが、その目の下にはうっすらと隈ができていた。あふ、とカフェインを摂取した後に…

La preoccpazione

「ラヴィーナ?」 びくっとその小さな背中が大きく震える。いつも布をかけているその顔には、今日は奥が外側からは一切見えない特殊仕様のサングラスをかけており、服装もどこか可愛らしさを感じさせるものである。肩に掛けている鞄の肩紐にラヴィーナのその…

A prima vista

 Io innomoro a prima vista. そう表現するのが最も正しい。何気なく違う散歩コースを選んだのが、幸いだったのだろう。運命を信じるほどには、自分は信心深くない。ただその一つの選択と偶然が重なって、出会った。出会った、と…