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18:楽しい休暇の過ごし方

1 修矢はカレンダーをめくって、にやっと笑う。四月から五月へとカレンダーは月が変わったのを示していた。そのにやにやと気味が悪いほどに浮かれている修矢の腕の中には大量の冊子が持たれている。「どうされましたか」 そんなににやつかれて、と哲は未だ…

17:本当のところは

1 裸足で冷たい廊下を走って走って、は扉を肩を揺らして押し開けた。視界が広がった先には、数日会えなかった友がいる。そして彼らの瞳も同様にを捉えた。、と声が沸く。 ルッスーリアは本当によかったわぁとに駆けより、スクアーロはその肩をバンバンと叩…

16:どうか

1 窓のない部屋に一瞬で広がった空に安堵した。涙が出そうなほどに安心した。心から、そう思った。だが次の瞬間その空に焼かれた。空にまき散らされた赤い炎に食らわれた。 思考が分解され、開かれた嘴からは悲鳴が零れた。呼吸をするたびに入ってくる酸素…

15:沈黙の掟

1 スクアーロは投げつけられた土鍋を台所に持って行って、それを流し場の中に置く。花瓶や何やらで殴られているとはいえども、やはり痛いものは痛いのだ。後でことの原因の辺りに見てもらおうと頭をさする。蛇口を上げて水を出し、それを溜めておく。「あら…

14:亀裂

1「ああ、クソ!」 よりにもよってこんな時に、と男は溜息をついてカフスの取れてしまった袖をいじくる。しかしどう努力したところで、カフスが戻るわけもない。深く深く溜息をついて、がっくりと肩を落とした。 これから自分はジロッティファミリーの一人…

13:嫉妬深いカレ

1「いらっしゃ――――――いっ!!」 飛行機から降りて、車に乗って向かった先は以前世話になった古城のような場所。そして晴れやかな声とともには歓迎を受ける。あぁんと下がった眉尻が特徴的な男性。「ルッスーリア!」 開かれた胸にはぱっと笑顔になっ…

12:迎えにきました待っていました

 はきゅっとバツ印をつけた。静かにその印を見つめて、マッキーを下ろす。いくつもいくつもつけてきたそのバツ印をつけるのは今日で最後である。カレンダーをから視線を外しては手に持っていたマッキーをペン立てに挿した。家の隅々までを見まわし、当分は見…

11:君に笑顔を

1 綱吉は息を切らしながら走って京子の姿を探す。獄寺たちに電話をしたので、彼らも探すのを手伝ってくれてはいる。だがなかなか見つからない。「…キョーコちゃん…っ」 一体どこに、という疑問ばかりが不安となって頭を過ぎる。黒曜の時のようなことにな…

10:譲れないこと

1「行くのか、ツナ?」 単調だけれど高めの己の家庭教師の声に綱吉はこくりと頷いた。 ずっとベッドに腰かけて考えにふけっていたが、やはり納得がいかなかった。こんなことはおかしい、間違っていると今までの自分が叫んでいる。今までいろんな事件に遭遇…

09 :Sei unica. Sei unico.

1「ただいまー」 返事ないかもしれないことに落胆しつつも修矢は玄関を押し開けた。だが、予想に反して返事はあった。「お帰り、修矢」「…あ、姉貴」 いつものようにそこに笑顔で立っているに修矢は目を見開いた。はぽすりと呆然としている修矢の頭に手を…

08:理解不能行動不能再起不能?

1 は呆然と赤い瞳に映った己を見る。その二つの瞳に映っていることが信じられず。そしてXANXUSは黒い瞳に映った自分を見つめる。何故この二つの瞳が己を映さなかったのか理解できず。「――――っい、」 信じられないほどの強い力で二の腕を掴まれて…

07:電話の向こう

1 ぱんぱんと破裂音が耳を劈く。次の瞬間叱咤が響き渡った。「もっと速く!そんな遅さでは相手に撃たれます!」「はい!」 ぱん、ともう一発。また響く。「必ず二発連続で!」「はい!」 ぱんぱんと二発。遅いと叱咤。二発、叱咤。二発、叱咤。それが彼是…