子世代

La preoccpazione

「ラヴィーナ?」 びくっとその小さな背中が大きく震える。いつも布をかけているその顔には、今日は奥が外側からは一切見えない特殊仕様のサングラスをかけており、服装もどこか可愛らしさを感じさせるものである。肩に掛けている鞄の肩紐にラヴィーナのその…

A prima vista

 Io innomoro a prima vista. そう表現するのが最も正しい。何気なく違う散歩コースを選んだのが、幸いだったのだろう。運命を信じるほどには、自分は信心深くない。ただその一つの選択と偶然が重なって、出会った。出会った、と…

先輩からのお言葉

 乗せた拳が頬骨を砕いた音が、密閉された室内に響く。尤も通風孔は開かれたままなので、完全に密閉されたとは言えない。室内の空気は、骨を折るという行為によって生じた鈍く重たい音を、同じ室内にいたもう一人の男と、殴られている男の耳にしっかりと届け…

Rivali in amore

 セオ、と掛けられた声に、セオは大きな体をのっそりと動かして声のした方向へと顔を向けた。しかし視線の先には誰もいない。なんだと思いつつ眉間に軽くしわを寄せた時に、下からひょいと手が伸びてきた。そしてああ、とセオは下へと視線をずらす。高すぎる…

falso rapimento

 好きな人に振り向いて欲しいと言うのは、決して我儘などではないと思う。こっちを向いてと、興味を示してと、そう思うことの一体どこかいけないことなのか。 愛している愛している。愛しているから、振り向いて欲しい。彼がこちらを向かないのを知っていて…

トラウマに追いうちをかける

 もう生きていけない、とセオは枕に突っ伏してう、うと半泣きで呻いていた。 勿論あの後トイレに(抜くために)直行したけれど、心配したラヴィーナがトイレの前にいられたのは何の拷問かと思った。マンマには「男の子ですからそう言うこともありますよ」と…

Il scudo

1 これでも自分は大きいほうだと自負している己の隣に立つ、さらに体格の良い青年。 セオはジーモの方へと目を向けることもなく、静かにその顎と唇、それから肺他、声を発するための器官を動かして声を紡ぎ出した。その声がジーモの耳へと届いても、ジーモ…

脱童貞の話

 ず、と林檎の写真が貼られた四角い、長方形の、直方体の、中に内容物が液体が入っているものがぺほんとへこんだ。その頭頂部には細く白い筒状の、一般的にストローと呼ばれるものが突き刺されている。そしてセオは、それに口をつけていた。その手元には薄い…