第5部「コーザノストラとしての在り方」

  • 34:Buoun Compleanno

    1「ハァ」 そう、間抜けな返事をした笑い顔の男に赤い目をした男は、何だと僅かに眉間に皺を寄せた。さも不機嫌そうな顔をされて、シャルカーンはイエイエと袖を軽く振って笑う。尤ももとより笑い顔なので、笑ったのは声だけではある。 そしてシャルカーン…

  • 36:心配なんです

    1 大きくなったものだ、とはさくんと手元の海老フライを切った。足元ではセオがきらきらと目を輝かせながら、の手元を覗き込もうと背伸びしているが、如何せん背がまだまだ低いため、キッチンの台で母が一体何をしているのかは見えない。ただ、美味しそうな…

  • 37:子供の我儘

    1 セオ!と明るくかけられた声に、セオは鞄に道具をしまっていた手を止めてそちらへと目を向けた。同い年の子供たちが集まって、セオと同じように帰る支度を始めている。「おれんとこさ、バッボとマンマが見にきてくれるんだ!」「あ、わたしのパパーとマン…

  • 38:Capomafia o Padre

    1 Hallo、と見なれない女性に声をかけられた。普段耳に触れるのはイタリア語か日本語だけなので、英語などついぞ久しい。はそう思いつつ、Halloと言葉を返した。そして声をかけてきた女性をへとその黒味が強い灰色の瞳を動かした。周囲には、子供…

  • 39:嘘吐きと友達と失態

    1 わらわらとクラスメートが移動をする。 セオはその様子を横目で見ながら、反対方向へと歩いて行った。それを見た一人が、セオと声をかけた。片手に教科書と筆記用具をもったセオは首をひねって何と軽く怪訝そうに尋ね返す。子供の集団が止まり、セオと反…

  • 40:La mia sorella minore

    1 明るい部屋に男は座っていた。男の剣呑な雰囲気とは別に、その部屋の空気は柔らかく、そして対面に座る老人は、その男の養父は穏やかな表情をして座っていた。その手にはコーヒーカップが持たれており、そこからは香ばしく鼻をくすぐる香りが漂っている。…

  • 41:兄として

    1 どうしてだろうか、とセオはごつんと自分の頭を突いてきた匣兵器の攻撃を受けて盛大に溜息を吐いた。もういい加減に突かれることも引っ掻かれることも慣れてきたという悲しい現状にひそやかに涙を心の中で落とす。言うまでもなく、そんなところで涙を落と…