4
「ちゃの、たすけて」
ラジュの手がはたきを持って、本の山にうずもれていた。シャルカーンはそれにオヤオヤと笑って、本を退ける。そうすると、長年たまっていた埃がぶわと浮かんだ。二人揃って、その埃に咳込む。
ドウシタンデスカ、とシャルカーンが尋ねれば、ラジュはふいと本棚の上を指差した。その一番上のところには下にうつぶせになった写真立てが置いてある。どうやらあれを取るために、本を積み重ねたらしい。
シャルカーンの身長であれば、手を伸ばせばもう余裕で届く。袖をまくった手でそれを取り、シャルカーンはアア、と笑う。ラジュは下からそれを覗き込み、軽く首をかしげた。
「ちゃの?」
「―――――――――――サァ、ドウデショウネ」
随分とくたびれた写真立ての中には、褐色の肌の少年と、それからこげ茶の髪の男が二人揃ってなんとも奇妙な笑顔で写っていた。そしてシャルカーンはその写真の埃をはたくと、そっと埃だらけの机の上に置いた。
「ドウデスカ?」
「ふたりとも…えがお、へん」
「…ソウデスカ?」
ソウデスカネ、とシャルカーンは首をかしげて、その二人が映る写真を見て、口元を僅かに緩めた。
今は亡き、かの男をどこか深くで思い出しながら。