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差し出された報告書をつるは受け取り目を通す。一通り読み終えると、机の上に角を揃えて置いた。
「助かったよ。おかげで無事に召集できた」
来なかった奴もいたがね、とつるは深い溜息を吐きながら、机の端に積まれていた他の書類に手を付けた。山積みにされた書類はそれだけつるが多忙であることを知らせている。
名前1はお役にたてて何よりですと一礼した。
「何か、いいことでもあったのかい」
「はい?」
突然言われた言葉に名前1は返す言葉を持たず疑問を疑問で返してしまう。一二度瞬きをし、名前1はつるの言葉を咀嚼すると、そんな風に見えましたか、とやはり疑問で返した。
「見えるよ。少し、表情が柔らかくなったように感じるね」
「久しく会わなかった友人と会いました」
「…アンタに友達がいたのかい」
聞く人が聞けば失礼な言葉であったが、つるの一言は名前1の人付き合いが極端に少ないことと、初めて会った時のことを考えての発言であった。
起立の姿勢を保ったまま、名前1は苦笑を零しながら、肩を揺らした。
「私もまさかこの年になって再会するとは思いもよりませんでした、中将」
「…なら、その再会は大事にした方がいいね」
老兵の口から零れ落ちた言葉を名前1は両手ですくいとる。そして二つ返事をし、左耳につけたピアスに軽く触れた。