第五人格

掃除屋

 多分それはただの気まぐれだったのだと、誰かが言った。 兎角、二つの魂を一つの傘に宿らせているハンターは面白くなかった。面白くないという表現は些か寛容に過ぎず、正直に言えば不愉快だった。本日の試合戦績に、完全勝利、それも四吊りを五連続ベスト…

愚弄

 彼らの髪は長く美しい。 だから、その頸が無防備にさらされているのは意外であったし、理由も無くそわそわとした。それが理由というわけではない。わけではないが、確かにそこに視線を注いでしまっていたのは揺るがしようのない事実であった。「お嬢さん。…

慣性

 ワインの色と香りを楽しむ。 ジョゼフはワイングラスを傾け、口元を綻ばせた。グラスの縁に唇をつけ、舌の上でその味と香りを転がしながら存分に楽しむ。「今、何時だと思っているの」「つまらないことを言わないで、君もどうだい」 太陽は真上からさんさ…

崩壊

 後一歩が足りなかった。最果ての暗号機から救助に来るには、遠すぎた。 エミリーの目の前で、エマが座った椅子が飛ぶ。爆風が顔をなぜ、焼け跡だけが残った眼前の光景にエミリーは呆然自失となり、膝をついた。 暗号機は残り四個。 ジョゼフは写真世界か…

枯死

 今日も今日もでイソップ・カールは手当てを受ける。 納棺師のスキル上、ハンターに失血放置されることも少なくはない。最後の一人になれば、納棺の意味を果たさなくなるため、その際は椅子に座らされるが、それ以外であれば、座らせて一カウントとるハンタ…