むじょエミ

掃除屋

 多分それはただの気まぐれだったのだと、誰かが言った。 兎角、二つの魂を一つの傘に宿らせているハンターは面白くなかった。面白くないという表現は些か寛容に過ぎず、正直に言えば不愉快だった。本日の試合戦績に、完全勝利、それも四吊りを五連続ベスト…

愚弄

 彼らの髪は長く美しい。 だから、その頸が無防備にさらされているのは意外であったし、理由も無くそわそわとした。それが理由というわけではない。わけではないが、確かにそこに視線を注いでしまっていたのは揺るがしようのない事実であった。「お嬢さん。…

崩壊

 後一歩が足りなかった。最果ての暗号機から救助に来るには、遠すぎた。 エミリーの目の前で、エマが座った椅子が飛ぶ。爆風が顔をなぜ、焼け跡だけが残った眼前の光景にエミリーは呆然自失となり、膝をついた。 暗号機は残り四個。 ジョゼフは写真世界か…

枯死

 今日も今日もでイソップ・カールは手当てを受ける。 納棺師のスキル上、ハンターに失血放置されることも少なくはない。最後の一人になれば、納棺の意味を果たさなくなるため、その際は椅子に座らされるが、それ以外であれば、座らせて一カウントとるハンタ…

幽閉の恐怖

 兎角、必安はもてた。 パウンドケーキを口に放り込み、リスのように頬を膨らませながら范無咎はそう言った。 それを飲み込もうとして喉に詰まらせたのか、胸を二三度叩いて無理矢理嚥下すると、通りをよくするため、アイスティーをあおって最後まで飲み下…

生還者なし

 めそり、めそり。 その泣き声に弱いのだと荘園で唯一の医師であるエミリー・ダイアーはそう告げた。その話を聞くのは、宝石のごとき翡翠の瞳を持つハンターである。「君の脳味噌はまともに機能しているのかい」「仕方ないじゃない。あんな風に泣かれたら部…