Como e Lavinia - 5/12

5

 裸電球が寂しくぶら下がっている部屋に銃声が一発響いた。四方をコンクリートで固められたその部屋に、その破裂音はよく反響する。
 そして、螺旋を描きながら飛び出た銃弾をその身に受けた対象は、短い声を震わせて体を小さく痙攣させる。引き金を引いた人間は銃の扱いに手馴れていないのか、負傷者の急所を外した。それでも時間が経過すれば出血多量で十分に死に至る。誰も救出には来ないであろうことを、銃を持つ人間はよくよく知っていた。コンクリートに横たわる、赤に溺れている光景を青年はただ漠然と眺める。そこには一切の感慨は存在しなかった。ただ、現在進行中の映像を頭で機械的に処理しているように見えた。
 破裂音がまた弾ける。一度銃弾を撃ち込まれた体がまた跳ね上がる。それはまるで陸に打ち上げられた魚のようだった。そういった表現をすれば少なからず、否、大半の人間は残酷だ非情だと非難することだろうが、少なくとも青年はそれに関しては非常に寛容であった。びちり、と撃たれたものが跳ねる。引き金をまた引く。撃つ。撃たれる。跳ねる。赤が飛ぶ。いくらかこの動作を繰り返し、引き金を引いても銃弾が発射されなくなった頃、青年はとうとう本来の意味での殺傷能力を失った武器を灰色の床に上に落とした。指紋を拭き取るつもりはないらしく、弾丸の入っていない銃を蹴り飛ばす。床に広がった血溜まりに、それは波紋を起こした。乾いた音が数回鳴ったが、血に飲み込まれた瞬間にそれは音を失くす。まるでそれは、青年の研究成果のようであった。
 青年はひどく、それはひどく深く嘆息する。それこそ、彼の一生を全て不意にしたかのような溜息であった。絶望にも似たそれで、青年は血の海に転がる生き物を眺める。
「僕は」
 呟く。僕らが、そう続く。
「滅んだのに、お前のような失敗作が、遺されていいはずがない」
 研究者としての青年にとって、当時は男児だったが、それだけは許容できなかった。そうだろう。青年は呟く。完璧と完全を求めれば、研究者としての命が終わっていることは青年はよくよく承知であった。完全の中から不完全を求める。それこそが、研究者としての本質であり、最も必要なものであると青年は思う。しかしそれでも、一度、青年がその当時に完璧だと判断したラインにまで達していた制作物が、愚劣の極みに落ち溺れる様を、青年は耐えられそうにもなかった。人を殺すための兵器が、殺せというキーワードがあれば、一切の情けも躊躇もなく、人を肉塊に変換させるための兵器が、そうでなくなることは、青年には許せない。
 こんなイキモノに変えてしまったのは、誰だ。醜悪で醜怪で、嫌悪をもよおす。出来損ない。
 血溜まりに沈む異形の怪物へ青年は、侮蔑に彩られた視線を向ける。青年は硝煙の臭いが付いた両手で顔を押さえた。アルコール殺菌の臭いでも、研究対象の血の臭いでもない。吐き気が背骨から一気に脳髄へと駆け上がり、青年は膝をついてコンクリートの床へと吐瀉物を撒く。日頃から食の細い方であったために、内容物は半端に途切れ、それから後は酸味の強い胃液が喉を焼いた。
 血溜まりの中の生物が突如跳ね上がる。青年は悲しげな瞳をそれに向けた。あまりに、哀しく、切なく、憐憫の情さえ催させた。八号、青年はそう唇を動かす。望むらくは。しかし、青年の願いを、引き千切られた分短くなった髪の毛を揺らした生き物は叶えることをしなかった。首を横に振るい、部屋に存在している三人、自分を除けば二人を少女は、その横に開いた瞳で視認した。恐れるようにして、小一時間ほど前までは、現在よりも寸法の短かった手足に戸惑い転び、扉に走る。血液をはたはたと落としつつ走れば、やはりその歩幅の大きさになれずに扉に激突し、尻餅をつく。ドアノブに伸ばした手は、伸ばし過ぎて突き指のように指を弾かれる。距離を測り間違えないように、今度こそ少女は扉を開けて外に出ようとする。けれども、また歩幅を誤り、爪先を扉に凄い勢いでぶつけ、少女は痛みでしゃがみこんだ。痛んだ爪先を保護するように伸ばした手を床にぶつける。困惑した少女の目から涙が零れ落ちる。口が引き絞られ、声にならない嗚咽が無音で落ちる。自分で開けた扉から、少女は這いながら、白杖を持たない盲人のように、伸ばせるだけ腕を精一杯に伸ばしつつ、その距離を測りつつ歩き逃げる。青年は追わなかった。
 取り残された青年はそして項垂れた。落ちぶれた創作物にどうしようもない涙が零れて落ちた。胸を非情に締め付けてくる感情は、言葉には到底、できなかった。

 

 人の気配にはひどく敏感にできている。できている、というよりもむしろ、そうならざるを得ない環境に置かれたが故の必然的な結果である。
 セオは許しを請おうとした人間の頭部へと向けた銃の引き金を無感動に引いた。破裂音が一つ響き、そして皺の寄った男の頭部が潰されたトマトのように弾ける。後ろの、一体いくらで購入したのであろうか、0がいくつも並びそうなタペストリーに頭蓋を撃ち抜かれ、後頭部に大穴が開いたそこから撒き散らされ、血液に混じった脳漿と脳髄に汚された。一つ、模様が増えたと、芸術の一種と考えれば、それも大したことがないのかもしれない。
 顎から上を失くした男は、指先をひくりひくりと痙攣させ、そして動かなくなった。流石に何か特殊な生物でもなければ、頭を吹き飛ばされて生きているというはずもなく、セオは動きを止めた人間を身下し、耳に取り付けてあるイヤホンマイクに話しかける。
「任務終了」
 手短な結論を受けた先には、現在本部に詰めていたルッスーリアの返事が明るく返された。
『はいはい、分かったわ。怪我しないように帰ってきなさいよぉ』
「うん、怪我、してない」
 受信機向こうの、どこか気落ちした声音に気付いたのか、ルッスーリアは少しの間を開け、言葉を授ける。
『元気にしてないと、ラーダが帰ってきた時にしょげるわよ。ボスとスクアーロが預かってるなら大丈夫だわ。心配せずに、いつも通りに居なさいな』
「…そうだね、ルッスーリア。うん」
『下手な報告書書いてボス怒らせないように』
「うん」
 セオは小さく笑い、受信を切った。豪華な装飾が与えられている天井を見上げて息を吐く。天井は鬱陶しい程に高く感じた。
 帰ろうと踵を返す。だがそれをセオは咄嗟に止め、本能的に半歩後ろに下がる。一歩踏み出していれば、足が確実に串刺しになる位置の床に漆黒の闇が突き立てられる。深々と床に食い込んだ針にセオは全身の筋肉を緊張させる。体に仕込まれた動作で、本部と連絡を取ろうとイヤホンに話しかけるものの、触れた指先にその機器は存在しなかった。いつ取られたのか、どのように取られたのか、セオには全く理解できなかった。
 足音も気配も何もかも、感じられない。生唾を飲み込み、どこから攻撃されても対処できるように神経を集中させる。太腿に取り付けてあるホルダーに収まっている銃を即座に引き抜く準備のため、指先に微かに適度な力を込めた。耳を澄ませ、気配を読む。体に叩きこまれた習慣と意図的な動作により、セオはそれを成り立たせたが、その姿を視認するまで、セオは全くその存在に気付かなかった。人としての息遣いも、攻撃のための殺気すらも感じさせない。扉が自動に開く様は、まるで幽霊でも見ているかのようだった。
 足音もなく、カラーの無声映画のように靴先と攻撃対象が姿を現す。黒い武器とは対照的な金色が目に眩しく映る。
「お前の妹は、どこにいる」
 セオが先程まで耳にしていたイヤホンを、手袋をはめた掌で弄びながら、そして壊した男は、そう言った。そんなものはこちらが聞きたい。セオは思った。しかし口にしたところで、男が答えるとも到底思えず、耳から抜き取られたイヤホンが指先で壊され、その残骸が床に落ちたのを音で感じる。あの距離から攻撃を仕掛けられたということは、間違いなくこの男は遠距離、もしくは中距離型戦闘タイプである。しかしそんなことが分かったところで、埋めようのない差は、ひしひしと肌に痛いほどに感じた。
 金色の髪、空色の目。これは兄の方のヴィルヘルム・ハウプトマンだろうとセオはあたりをつける。肩よりも長いその金糸はさらりと流れ、絡まることをしない。質問には答えず、銃をホルダーから瞬きよりも速く抜き放つと引き金を引く。攻撃を仕掛けてくる者は殺す。まっすぐに急所を狙った攻撃であったが、その銃弾は的から大きく外れた位置にめり込んだ。やはり音もなく、もう一人の男が扉の向こうから姿を見せる。黒色の針がその指には持たれていた。俯きがちの表情はしっかりと確認することはできない。
「…ハウプトマン兄弟」
 返事はないが頭の中の写真と照合させ、セオはそれが間違いでないことを確信した。敗北が脳裏をちらつき、フラッシュバックする。圧倒的に、スペックが異なることを瞬時に悟った。冷や汗が背骨を沿うようにして流れ落ちる。拍動する心音がやけに大きく耳の中に響いた。引き金を引いてから相手に到達するまでは、非常に、などという言葉など生易しい程に短い時間である。まさに刹那と呼ぶに相応しい。改造銃であるということと、炎を纏わせていることがそれを可能にした。しかし、それを針一本で弾道を逸らす。それもこちらが引き金を引いた後である。余程高い身体能力と、訓練され骨の髄にまで染着いた反射速度がなければ不可能なことである。肌が、泡立った。レベルが違う。恐怖にも似た寒気が喉の奥を震わせた。
 セオが呟いた言葉に、長髪と短髪の男は互いに視線を交わす。そして、長髪の男は余裕の表情でもって首筋を掻いた。面倒くさそうに視線を床に投げ落とし、指先をちちと振るう。間延びした声が舌の上を滑る。
「Well….noch einmal(あーもう一回)」
 人差し指が、いち、の形を作る。吐き出した息は重たく床に流れ落ちた。空色の、凍えるような瞳はセオの行動を縛りつけた。指先一つでも動かせば殺すとでも、口にされてもいないというのに、溢れ出す空気だけで語りかけてくる。皆無であった殺気が床にちりばめられ、足の裏から背筋をひたひたと上り詰めてくる。
 ヴィルヘルムは首を小さく傾げ、再度同じ言葉をセオに問いかけた。威圧感を込めるかのように、今度は彼自身の母国の、イタリア語と異なり子音が多く鋭い発音の多いドイツ語で、繰り返す。一単語ずつ、はっきりと区切られる、ただそれだけで、言葉と声は十分な殺意と殺気を相手に伝えることができた。例え内容がそれに準じたものではなくとも。
「Wo ist Ihre Schwester?(お前の妹はどこだ?)」
 セオは固く唇を結んだ。それは話すつもりがないという意志の表れでもあったが、それ以上に場の空気の重さに一言でも発するための舌が動かなかったというのも理由の一つであった。
 黙り込んでいるセオにヴォルフガングは兄であるヴィルヘルムに声をかける。
「彼はきっと知らないんだ、ヴィル。他所を当たった方がいい。まだ、彼は子供だ。いくら家族だとはいえ…対象者はそのヴィル。行こう」
「知っている。ヴォル、分かっているだろう。こいつは何か、知っている」
 腕を引っ張った弟に視線を動かさず、ヴィルヘルムは真向かいにいる青年へと視線を注いだ。全身を縛り付けるような視線に、セオは息を細くする。呼吸をすること自体がひどく億劫にすら感じられた。一息、ただ一息零すたびに、自身の命が一欠けら削られていくような感覚に捉われる。無防備な心臓に爪を突き立てられているかの感情である。自身の仲間が、いかにこれまで自分に対しての殺意たるものを押さえて訓練を行ってくれていたのか、セオはそれを切実に感じた。
 これこそが、純然たる恐怖である。足が竦む。足音も立てずに歩く姿は、対象者の精神に細い傷をつけた。短く息を吐き出し、追い詰められた獣のように毛を逆立てる。身長は然程変わらないというのに、その威圧感は雲泥の差である。父のそれでさえ、思えばある程度抑えられていたのかもしれないと、セオはそんな風に感じる。
 一歩進めば、一歩下がる。互いの距離を縮められないまま、お互いに前進し後退する。しかし無限に続く部屋など存在するわけもなく、セオはその背中が冷たい壁についたのを察した。金色の睫で縁取られた目が一度瞬きをして空色を隠す。
「Wo ist sie(彼女はどこだ)」
「お、お前らが浚ったんじゃないのか」
 情けないことにどもり、声は一度裏返った。もうこれ以上の後退は許されない。それがセオの背中を押したのか、あるいはただの背水の陣なのか、セオは恐怖を乱暴に抑え込み、距離を詰めたヴィルヘルムへまっすぐ視線を逃がさずに向けた。震えそうになった足は、丹田に力を込めてしっかりと床を踏みしめる。
 セオの返答にヴィルヘルムは初めてその仏頂面を崩し、後方にいるヴォルフガングへと視線を交わした。青年から視線を逸らしたところで、それが死に繋がるとは一切考えていない動作であった。余裕ともいえるその行動はしかし、間違いではない。セオは唇を噛んだ。舐められていることに異議申し立てはできない。それ程までに、差は歴然としたものであった。
 ドイツ語で話を終えると、ああとヴィルヘルムはセオへと視線を戻す。
「実験番号八、ラヴィーナ、ラーダ。これらの名を持った対象はようするに現在行方不明なんだな」
 セオは唾を飲み込むことで返答を拒否したが、その動作一つでヴィルヘルムは全てを悟ったらしく、顎を軽く指先で撫でた。
「手違いがあったようだな」
「ヴィル。ならもういいだろう。彼を問い詰めるよりも、俺達は事実確認を急ぐべきだ」
「非常に論理的な思考だ、、ヴォル。お前らしいと言えばお前らしい。だがどうする?こいつが帰って他の仲間に俺達のことを口にすれば?まあ口にしなくても、こいつの口から出た言葉を考えれば、俺達には八号誘拐の嫌疑がかけられている可能性は高い。と、言うよりも嫌疑を掛けられているだろう。実質俺達はそれを否定する必要もないわけだがな」
 まだ完遂されていないだけで。ヴィルヘルムはそう告げた。金糸を肩に滑らせ、男は今度こそ、明確な殺意をセオへと向けた。呼吸が止まる。
「雑魚でも、頭数は少ないに限る」
 その言葉が言い終わらないうちにセオはもう片方の腿のホルダーの銃を引き抜いた。二つの銃口を二人の人間に一つずつ向ける。細く吐き出されていく息の中で、銃口は驚く程に震えてはいなかった。体に染みついていることとは恐ろしく、二人の急所へと的を定めていた。しかし、セオは銃弾を、人差し指に力を込めることができない。引けば、首が落ちる。そう直感として、体は叫んでいた。過剰表現ではなく、実際にそうなるであろうとセオは自分の頭部が意識を手放し、床に転がり落ちる様をまざまざと思い浮かべることができた。頭のなくなった体は、首から血を噴水の如く溢れさせながらどうと倒れる。そして目の前の男たちは何事もなかったかのように部屋を出るのだ。そこまで鮮明に、まるで撮影済みのビデオの映像を再生しているかのように、脳裏をそれは過ぎ去った。あまりにも鮮明で、言葉にできない死である。喉が乾涸びる。体が旱魃に襲われたような気分が青年を襲った。枯渇しているものが多すぎて、指一本動かせない。洞察力、殺傷力、体力、速さ、そして経験。場数など、及ぶはずもない。雰囲気一つでそれを強引に理解させる。
 は。
 吐き出した息が物音一つしない静寂を震わせた。それを切っ掛けに両者が動く。セオは引き金を、ヴィルヘルムは手首にはめられている腕輪を振った。ただヴォルフガングだけは、青年から放たれた銃弾を針で弾道をずらすにとどめた。
 後退は許されず上へと逃げる素振りを見せ、それをフェイントに空いている脇をすり抜けて広い背後に抜けようとした。弟であるヴォルフガングに殺意がないのをセオは感じ取っていた。ならば、さらにその後ろに開かれたままの扉から外へと逃げることは不可能ではない。
 脇が開いていたのか、それともわざと開けてくれていたのか、セオに判断などできるはずもなかった。敵に背を向けて逃げ出すのは初めての経験である。しかし、全身でその場からの逃亡が最も正しい選択肢であることを、本能的に察知はしていた。戦い果てることではなく、ヴィルヘルムが述べたように、この場を逃げ出して現状報告を本部に入れることが最優先であることは間違いない。背中と背中が組み合わさって、セオはさらにもう一歩床を蹴りつける。男よりまだ小柄な分、それでも十分に大きな体躯はしていたが、小回りは効く。抜け様に体を大きくひねらなければ当たってしまう胴体目掛けて銃弾を放つ。振り返り確認する愚行はしなかった。そんな無駄な動作すればするほど、逃げ出せる確率は0に等しくなる。男の体が後ろで回る足音を耳で拾った。さらに脆い天井を崩すように円状に銃弾を数発撃ちこみ、大きな一発を砕くように撃つ。瓦礫が少なくとも、一瞬でも足止めを果たしてくれることをセオは祈った。
 突っ込んできたセオにヴォルフガングは動きを止める。戸惑いを明らかに孕んだ瞳へ、セオは抜けることを確信する。何故、プロ中のプロであるこの男が自分一人殺すことを躊躇するのか青年は知らない。ただ、セオは思う。対象者が誰であれ武器を向けることを躊躇う人間は、暗殺者には向いていないのだと。
 扉の上の枠に手をかける。遠心力と銃で廊下の天井に一度穴をあけ、上に逃げる。廊下に逃げるだけではすぐに追いつかれるであろうし、逃げ切れる可能性も低くなる。階を隔てることで、その逃亡の確率は格段に上がる。敵に完全に集中していたセオはそこでようやく、ほぼ初めてといっていい程に、気付いた。淡い、茶色の髪。廊下の暗がりでいくらか彩度が落ちて見えるが、それは確かに、セオがよく知る人間のものであった。ぱたん。裸足が床を叩く音である。激しい銃声と瓦礫が落ちた音に紛れて潰されていた音でもあった。
 そして、セオはその淡い色の茶色が、部屋の明かりにまで到達し、自分にぶつかりそうになった時点で体を急停止させる。後ろの暗殺者二人の、まさかではあったが、自分と同様に息をのむ音が耳に届く。
 兄は妹の名を呼ぶ。呼んだ対象は少し前まで知っていた容姿とは、面影こそ残っていたものの、変わり果てていた。
「ラヴィーナ」
 茶の髪は、ふらと、初めて出会った時のように体を真っ赤に染め上げて、そこに立つ自分ではない生き物を、みた。