03海賊時代

追うもの追われるもの

 凪いだ海面を泳ぐ一隻の甲板の上ではMARINEの帽子を各々被った屈強な男共が所狭しと動き回っていた。天候が変わりやすい新世界においてでも、島の周囲では気候が落ち着いており、穏やかな風が肌をさらった。その風の中に葉巻の煙が飛ばされるようにし…

海賊と海兵

1 目の前の男を眺める。 口に咥えた二本の葉巻からはもうもうと煙が立ち上り、それがスモーカーの視界における視認をある程度妨げていた。 しかしながら、彼にとってはそれは日常茶飯事の出来事であり、今更ながらにして追求すべき事柄ではなく寧ろ、その…

海をあたう

1 酒場で酒を嗜む。 周囲のざわついた空気の中で、はクロコダイルの半分ほどに減ったグラスに酒を注ぎ足した。こぽんと瓶の中に泡が入り、ぼとんとグラスの中を酒が満たす。あふれそうになるくらいに入れようとしたので、見かねたクロコダイルはもういいと…

次こそ

 頬を伝った汗を手の甲で拭う。ゾロは肺胞内部の二酸化炭素全てを吐き出すかのように、大きく深く息を吐いた。そして瓦礫の上に悠然と座って、さも楽しげな笑みを口に乗せている女へと視線を移す。 一体いつからいた等々質問は多くあるが、それ以上に不愉快…

Happy Birthday

 はっぴーばーすでーとぅーゆー。 灯された蝋燭の火を吹き消したことがあったろうか。クロコダイルは咥えた葉巻の煙をくゆらせながら、深く体をソファに埋める。きっちりと隙間なく着込んだシャツの袖、カフスボタンを右手で触れ、その精巧な細工に目を細め…

そんなことはないのだろうけれども

 湯煙の先で、傷痕の上を水滴が走り落ちる。透明な湯の中に浸された体は、僅かながらも凹凸が存在し、体を分断するかのように走っている古傷からは気泡が一つ二つを零れて水面に空気を弾けさせた。 狭い、とは言わないまでも、決して広くはない湯船の中で四…